豊かな日々を生きるために 読んでほしい本「やさしさグルグル」
こんにちは!amyです。
なんだかこのところ世の中が殺伐としているような気がしますが、私自身、仕事のストレスや毎日の忙しさで余裕のない時もあります。
本当に自分の余裕がない時、わき目もふらずに突き進むだけなので、余裕を持とうという意識すらありません。
そんな中、出会った本にハッとさせられたことがあったので、ぜひ、今日はその本を紹介させてください。(若干のネタバレも含みます)
行正り香さんのエッセイ集
行正り香さんは、料理研究科として知られた方ですが、今回私が読んだ「やさしさグルグル」はほとんど料理と関係のないエッセイ集です。
ところどころ、エピソードに関わりのある料理レシピが紹介されている部分だけが、料理研究科らしさが見え隠れしますが、それ以外は彼女の家族や今まで出会ってきた人との話を中心に、短いお話が展開されていき、料理研究科の側面はほぼありません。
行正さんは以前は電通でCMプロデューサーとして活躍されていた方だそうです。
失礼ながら、女性のプロデューサーに対してバリバリのキャリアウーマンをイメージを勝手に抱いていた私ですが、この「やさしさグルグル」は全体が優しい雰囲気に包まれていて、読むと空気の流れが変わってゆっくりになる印象すらあるので、彼女自身の空気感がそういった優しさをまとったものなのかなと、勝手に想像しています。
日常の気づきの中にある「やさしさグルグル」
「やさしさグルグル」はそんなエッセイの中の一つのタイトルで、行正さんの娘さんたちの、食べ物を分け合うエピソードからのお話です。
「ママ、おもしろいね。りんごがグルグルまわってる。」と、かりんが言います。
本当だなあと、気づかされます。優しさというのは、グルグルとまわっていくもの。まず自分が手放してはじめて、まわりはじめるものなんだなあ、と。
自分で手放してはじめて、優しさがまわりはじめる。
なるほど。
ふと、自分の身に置き換え考えてみて、そんなこと自分はできているだろうかと考えるきっかけになりました。
たとえば私の場合、初対面の人や仕事上のお客さんが相手だと、手放したり譲ったりと言うことが自然とできているのかもしれませんが、慣れた相手や良くない印象を持っている相手の場合、それができていないがために、関係が悪化することもあるのかもしれません。
誰かと関係がうまくいかない時は、ちょっと立ち止まって、まずは自分が手放すことができているか、考えてみるといいかもしれません。
相手がそれに応えてくれた時、優しさがまわりはじめてくれるかも。
もし、そんな優しさが世界中に広がったら…どんなにいいかなと。
多くの人に読んでもらいたい「許しあうシーズン」
外食先でもし食事に虫が入っていたら
突然ですが、もし飲食店に行った時、食事に虫が入っていたらどうしますか?
店員さんに指摘して、料理を取り替えてもったり、返金してもらうでしょうか。店員さんの対応にもよるかもしれませんが、怒ったり帰ってしまう人も中にはいるかもしれません。
著者が母親と一緒に銀座のラーメン屋さんに入った時、やはり食事の中に虫が入っていたようです。このお母さんはどうしたか…?
この時、著者のお母さんはそのまま虫を取り出して食事をし、会計の時にこっそり店員さんに教えました。そして、返金しようとする店側の提案を断り、颯爽とお店を出て行きます。
そんな姿を見て、著者は思います。
小さな失敗は誰だってする。それが自分の命を脅かすほどの大変なことであれば大いに騒ぎ立てなくてはいけないけれど、そうでもなければ、見過ごしてあげたり、許してあげる余裕を持つことも大事なのかもしれません。
(中略)
彼らの何十年にもわたるすばらしい努力をすべて否定してしまうほど取返しのつかない失敗だったのか?
(中略)
完璧を互いに求め合えば、そのうち誰もが失敗を恐れ、行動することができなくなり、結局は自分を苦しめることになるような気がします。
私はこの部分にハッとさせられ、反省させられました。
余裕の無い私がした失敗
ちょうどこの本に出会った頃、私は自分の結婚式を終えた頃でした。
結婚式の準備をする中で、プランナーさんとの間で大きな行き違いの積み重ねがあり、責任者の方に苦言を伝えたことがありました。
当時私は、なるべく冷静に対応しようと思っていたにもかかわらず、担当プランナーとしての姿勢に不信感を感じるあまり、非を認め平謝りするに先方の上司に対し、プロ意識に欠けると過度に責めてしまいました。
私もお客さん相手のお仕事をしています。接客中に厳しいことを言われたり、クレームをつけられることもあります。クレームを受けて当然だと思うこともあれば、行き過ぎたクレームだと感じ、対応に悩まされる時も度々です。
そのため、自分がお客さんの立場の場合、なんとなく「良いお客さん」であろうと日々生活してきたつもりでした。
でも、いざ結婚式と言う人生の中の一大イベントのこととなったとき、余裕がなくなり、自分は良いお客さんどころか、自分がなりたくなかった行き過ぎたクレームをいうお客さんになっていたと思います。
もちろん、先方のミスを指摘することは大事であったと思います。でもあの時、「許す」「相手の努力を認める」と言う視点が、私には欠けていました。プロ意識と言う言葉を武器に、相手に完璧を求めすぎていたのですね。
今思うと無理に「いいお客さん」であろうとするよりは、まずは自分に余裕を持つことからしなくてはいけませんでした。
相手を許し相手を認める世の中になれば
ラーメン屋さんの エピソードは、「許しあうシーズン」と言うタイトルのお話の中に掲載されています。
「やさしさグルグル」には70編以上のエッセイが載っていますが、中でも私は多くの人、特に心に余裕のない人にぜひこのエピソードを読んでもらいたいと思っています。
冒頭にも書きましたが、殺伐とした世の中だと思うことが増えました。
私の職場でも、余裕の無いお客さん、他人にものすごく厳しいお客さんが多いです。社会全体がそうなってしまったから、結局はみんなが生きにくい社会になっています。
例えば、クレームに忙殺される職場もあります。日本企業全体がクレーム対応に裂く時間と労力は相当なものでは無いかと思っています。
企業のためになる苦言であれば、企業の成長に必要かと思いますが、過度な苦言は、かえって負のサイクルを生みます。(判断が難しいですが)
人手不足と言われていますが、クレームに忙殺される時間がなくなれば、もっと従業員が早く帰ることもできて、その人は早く帰ったことでプライベートを充実させ、プライベートが充実したことで、消費も増えるし、経済は潤うし…といいことずくめなのにとよく思います。
実際理想論だとは思いますが、多くの人が許し合うことができればどんなにいいか。片方が許すだけでは、そこで終わりです。許された人も、また相手を許し、その連鎖でいい社会を作っていけたら、また自分にかえってきて、一人一人も、社会も今より少しまぁるくなるんじゃないかなと思います。
優しさに包まれる本
連鎖する優しさ。連鎖する許し。この世は人間のつながりでできているんだなと思わせてくれるこの本は、全体が優しさや慈しみで溢れています。
一つ一つのエピソードの中で特別なことが起きるわけではないのですが、日常の気づきの積み重ねが書いてあります。
私がこの本に出会ったのは、偶然に見つけた小さな小さな街のカフェでした。
本棚に陳列されたこのほんのタイトルにになんとなく惹かれ手にしましたが、知られざる名著に出会った気がして嬉しかったです。
そこのカフェを一人で切り盛りするお姉さんも、この本のように優しい雰囲気を持った人でした。
そんな雰囲気を私も出せるようになりたいです。
一つ一つのお話が短いくとさらりとしてるので、少しずつ、例えば、「今日はこの話」と言う感じでのんびり読み進めていくこともできます。
ここで私が拙い文章で書くよりもはるかに素敵で優しさに溢れた行正さんの文章が、皆さんの暮らしや心をより豊かにしてくれると思います。
ちなみに、大きめの書店を何か所か回りましたが、2012年出版のせいか、実際に置いていた店舗はなかったです。
楽天ブックスでは売り切れのため、amazonで購入しました。
他にも、図書館で扱っているところもありますので、ぜひ一度読んでみてくださいね。